書評
「ティアニー先生の臨床入門」―ローレンス・ティアニー,松村正巳 著
岸田 直樹
1
1手稲渓仁会病院総合内科・感染症科
pp.21
発行日 2011年1月20日
Published Date 2011/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102183
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幸せにもティアニー先生のケース・カンファレンスへ幾度となく参加し,ケース・プレゼンテーションもさせていただくことができた。そんな自分が回を重ねていくうちに,その真の魅力として感じはじめていることがある。「鑑別診断学の神様」として名高いティアニー先生のすごさを皆で語ると,“網羅的な鑑別疾患”や“稀な疾患の知識”となることがやはり多い。しかし,それは真の魅力ではないのであろうと…。ティアニー先生のすごさは,鑑別疾患を網羅的に挙げるマシーンとしてのすごさ,重箱の隅まで行き届いたサイボーグのような知識量,そんなものではまったくないと回を重ねるごとに感じている自分がある。「いくつもあるプロブレムリストから,鑑別疾患を挙げるに値するプロブレムのみを抽出し,優先順位を付けて鑑別疾患を挙げていく時間的空間的アプローチ」そのすごさである。
自分では言葉にできなかった,瞬時に判断するその眼力が,なんと本書では単なるセンスとして語られるのではなく,的確に文章化されている。読者には,症例によってどの陽性所見を組み合わせたかや,鑑別疾患に優先順位を与えうるclinical pearlの使い方にぜひ注目してほしい。そして,結局はティアニー先生の鑑別は2つか3つとなっている(が,2つ目以降にも,もはや重みはそれほどない)ことに気がつく。診断がつかないときは,多くの微妙な陽性所見に振り回されているのであるが,ティアニー先生にはそのブレがない。最近では,なんとかティアニー先生を振り回してやろうとケースプレゼンテーションで仕掛けている自分がいるが,敗北する。
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