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大好評だった前著『ティアニー先生の診断入門』に続いて本書が世に出た。「名匠に学ぶに勝るものなし!!」のキャッチフレーズに思わず読書欲がかき立てられる。第1部「臨床入門」では豊富な臨床経験をもとに,ティアニー先生が医学の神髄をわかりやすく解説される。「より多くの時間を患者とともに過ごした医学生・研修医こそが優れた臨床医として成長していく」「同僚が主治医である患者をも観察できる機会にできるだけ参加し,病棟・外来・救命救急室で最大限時間を過ごすべき」……これらの姿勢は臨床能力を極めようとする者の不易の姿である。職人の年季奉公と同じく,よき指導医から導きを受け,額に汗し貪欲に患者さんから直接学ぶことの重要性が強調されている。さらに,指導医の心得に対しては,「最良の教育者のゴールは,生徒が教育者よりもより良き医師に成長すること。教育者は常に,生徒の知識欲,より経験しようとする意欲を刺激しなければならない」と述べられている。心深くに楔を打ち込まれた,そんな強い印象を受けた。
研修医は,第2部「症例呈示のスキル」を読み実践すれば,指導医から必ずや賞賛の嵐を受けることだろう。第3部では12の症例を用いながら診断を導くためのポイントが解説されている。キーワードの適切な抽出と重要キーワードからの鑑別診断の展開が見事である。ここでは時に厳しく親愛の情を胸に,きらめくパールとともに医学の深淵が描かれている。医学教育におけるパールは「ある疾患の1つの側面を短く,明快に表現し,さらにユーモアをも加味されたもの」である。「50歳以上の患者で多発性硬化症を診断したら,真の診断はほかにある(If you diagnose multiple sclerosis over age 50, diagnose something else.)」臨床経験が増すほど,パールが語りかける真理がわかってくる。
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