書評
「実践 漢方ガイド 日常診療に活かすエキス製剤の使い方」―中野 哲,森 博美 監修
岡部 哲郎
1
1東京大学・漢方生体防御機能学
pp.757
発行日 2010年9月20日
Published Date 2010/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102119
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漢方医学が伝来して以来,ほぼ1500年になる。1967年に初の漢方製剤の薬価基準収載が行われ,再び日本国民の医療の一翼を担うことになった。現在148処方の漢方薬が保険医療に組み込まれている。
“緑茶は頭部の熱を冷まし,精神を覚醒するので夏の暑さによる口渇,頭痛に効果がある”―漢方医学はこのような健康の知恵が東洋の自然哲学に基づき医学として理論的に体系化されたものである。同じ病気でも体が冷えている患者には温める漢方薬が,体が熱い患者には冷やす作用の処方を用いる。体質や環境を考慮に入れ,多次元にわたり重層的診療を行う漢方医学の病理概念を科学教育を受けたわれわれが理解するのは容易でない。その上,古代より漢方医学は「方伎」に分類され,外科手術と同じく技術の伝承と訓練(相伝)の医学であった。漢方医学の治療効果は医師の相伝と熟練度に大きく左右される。
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