書評
―森 博美,山口 均 編―急性中毒ハンドファイル
須崎 紳一郎
1
1武蔵野赤十字病院救命救急センター
pp.1733
発行日 2012年10月10日
Published Date 2012/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402106219
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ベテラン救急医ならいざ知らず,「中毒」と聞くと身構えてしまうだろう.何と言っても原因物質は無数にある.日常頻度の高いマイナートランキライザーの過量服用なら,まだ診療勘もあるが,中毒には耳慣れない薬も農薬も脱法ドラッグもある.最近は「得体の知れない外国薬?」も稀ではない.原因物質の情報検索には,まず医薬品なら添付文書ファイルか,それらをまとめた『日本医薬品集』が探される.医薬品以外でもWEB検索は強力で,瞬く間に(しばしば膨大な)情報がPCから打ち出される.でも,それらを見ても「中毒の病態」も「毒性」もはっきりせず,何より肝心の患者の「治療・対処」にはほとんど無益な記事の羅列だと気付く.もともと中毒のための資料でないのだから.結局,中毒を熟知し,「診療を読める」者が厳選した情報でなければ,量が多くても実診療の役には立たない.
本書では例えば医薬品では収録は33種に絞られ,その一方で外用消毒薬の「マキロン®」が載せられているなど,ややもすれば偏った選択に見えるかもしれない.しかし,これまで30年間,救急に専従し急性中毒に接してきた立場で眺めれば,本書の記載対象100種の選び方は実に渋い.農薬,家庭用品,工業用薬品,自然毒と合わせて,日常の救急臨床で接する中毒物質はまず本書で網羅されていると言ってよい.この点,本書には同じ著者らによるロングセラー『急性中毒情報ファイル』とその改訂が生かされていることは間違いない.
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