書評
—石川 哲 編—神経眼科学
鈴木 二郎
1
1東北大学脳神経外科
pp.829
発行日 1974年8月1日
Published Date 1974/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203587
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- 文献概要
神経眼科学ほど面白い臨床医学の領域は他にそうない。「眼は口ほどに物をいい」という程,人の眼はその内的表現までもするものであり,左右の眼球の動き,眼瞼の動き,瞳孔の反応,視力の変化,視野の欠損,眼底の変化,あるいは毛様筋の調節,これらの組合せによって眠を診ただけで,脳の何処にどんな変化が起っているかを推定することが出来るし,また全身性疾患をもいい当てることが出来るのである。筆者は毎日の様に人様の頭を開いて脳にメスを加えさせて頂いているが,神経眼科学の知識人としては到底この様なことは易々と出来るものではない。
本書には眼と脳を結びつける解剖生理が平易に判り易く記械されており,また脳の局所の障害が眼にどんな変化を起してくるか,逆に眼の症状に注目すれば脳のどの部分にどんな変化が起っているか,その他中毒症,代謝性疾患,血管性疾患や先天性疾患をも診断出来るということが懇切丁寧に述べられている。或程度の知識のある筆者にとっても字引代りに.何時も座右に置きたくもなる本である。一方視野の測定法や眼底のみかた等の基本的手法に関しては初心者も成程と領く様に掌に指さす様な説明がされており,学生諸君にも手頃な教科書である。また単にそれだけではない。石川教授御一門が開拓された技術を駆使した新しい眼球運動や瞳孔運動の検査法や,電子顕微鏡を利用した眼の形態学と生理学,病理学を結びつけた所見も随所に見られるのも本書の大きな特長である。従って眼科専門の先生にも御一読をお奨めしたい良書と思われる。おまけに巻末には簡単な注釈付きで神経眼科学,神経学に関係する夥しい症例群が収録されているが,それは本書に花をそえたものともいうことが出来る。
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