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1 診療の概要
フルニエ壊疽(Fournier's gangrene)は1800年代後半にFournier1)によって提唱された疾患概念であり,元来,男性に突然発症し,急速に進展する性器の壊死として報告された。その後,1900年代の前半にMeleney2)は,類似疾患をまとめて報告した際に全例に溶血連鎖球菌を検出したことから,hemolytic streptococcal gangreneと名付けた。1952年には,Wilson3)が原因菌は多岐にわたることを報告し,会陰,性器,肛門周囲に発症する筋膜壊死を主体とした皮膚軟部組織感染症を壊死性筋膜炎(necrotizing fasciitis)として,一般的な概念を提唱した。Eke4)の1,726例の集計では,抗生剤や外科的処置が発達した現在においても,致死率は16%に達すると報告されている。フルニエ壊疽の40~60%に糖尿病が合併しており,その他アルコール常用,免疫力低下状態,ステロイド長期内服,末しょう血管障害なども危険因子と考えられている5,6)。
感染経路として,皮膚外傷(手術操作を含む)からの進展,尿路感染(尿道周囲腺)からの進展,肛門周囲の感染からの進展,などが考えられている4)。いずれの場合においても,皮下に侵入した菌によって引き起こされた感染が皮下脂肪組織と浅筋膜の壊死として深在性に水平に広がり,局所の壊死や血管閉塞のために抗菌薬が患部に有効に移行しないため,診断とともにすみやかな外科的処置が不可欠である。石黒ら7)は,発症12時間以内に手術を施行した場合の死亡率が10%であるのに対し,手術までに12時間以上経過した場合の死亡率は50%に達するとして,迅速な手術による対応の重要性を強調している。
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