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1 診療の概要
尿道下裂とは,尿道口が亀頭の先端の正常な位置まで形成されない先天異常であり,胎生期の尿道ひだ(urethral fold)の癒合が不完全なために発生すると考えられる。尿道口の位置(術中陰茎の屈曲が是正された状態で判定)により,亀頭部型,冠状溝型,陰茎型(遠位,中間位,近位),陰茎陰囊部型,陰囊部型,会陰部型と分類される(図1)。欧米では男児300人に1人程度の発生頻度といわれているが,本邦ではそれよりも低く,1,000~1,200人に1人程度とされている。最近の疫学的調査にて,発生頻度が増加してきているという報告もあり1,2),環境ホルモンの関与が推察されている。最近,尿道下裂の発生に関連する遺伝子CXorf6が同定されたが3),今後さらに発生原因に関しての分子生物学的研究が進むことが期待される。
尿道下裂は尿道口の位置が異常であるだけでなく,多くは陰茎の腹側への屈曲が認められる。従来は,尿道索(chordee)によるものと一元的に考えられていたが,これは形成不全の尿道板あるいは尿道海綿体であり,索切除(chordectomy)を必ずしも要さない場合もあることが判明した。屈曲は陰茎皮膚(skin chordee),Buck筋膜や肉様膜の形成不全,あるいは陰茎白膜の形成不全によるものとされている。また,陰茎の包皮は背側に余剰に存在するが,腹側の包皮は過小であり,亀頭が露出していることが多い。軽度の尿道下裂では包皮の状態も正常に近く,年長になってから初めて気がつかれる場合もある。また,特殊型としてはmegameatus intact prepuce(MIP)や(図1),尿道口が正常位置に開口していて陰茎の屈曲を認めるchordee without hypospadiasがある。高度の尿道下裂の場合には,性分化異常症(disorders of sex development:DSD)の合併を考慮しなくてはならない。特に,非触知精巣を伴う場合にはDSDが高率に合併するという報告もあるため,染色体検査や腹腔鏡による検索も必要となる(図2)4,5)。
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