交見室
メッシュ時代に注意すべきこと
加藤 久美子
1
1名古屋第一赤十字病院女性泌尿器科
pp.175
発行日 2007年2月20日
Published Date 2007/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101059
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女性腹圧性尿失禁に対するTVT(tension-free vaginal tape)手術,TOT(transobturator tape/経閉鎖孔式テープ)手術,性器脱に対するTVM(tension-free vaginal mesh)手術など,女性泌尿器科の分野では,ポリプロピレンメッシュを使ったさまざまな術式が生まれ,「メッシュ時代」というべき活況を呈している。ポリプロピレンメッシュは鼠径ヘルニア,腹壁ヘルニアの治療で定番となって久しいが,女性泌尿器科への応用においては腟壁びらん(メッシュの腟壁への露出)に注意を要する。同様の合併症はStamey手術,Vesicaスリング手術にも存在したが(日泌尿会誌95:17-24,2004),その症状は帯下,性器出血のようにわかりやすいものであった。ポリプロピレンメッシュは感染に強いだけに,本人は無症状で,定期受診やパートナーの性交痛で判明するのが特徴である。
TVT手術後の腟壁びらんは,各種調査で0.5~0.7%と頻度は低い。筆者らは,195名中1名で経験した(臨泌60:243-245,2006)。9週前にTVT手術を施行した女性から,「性交時にパートナーが陰茎に痛みを訴える」と聞いたときは,友人の経験談でいつかはと覚悟してはいたものの,心臓の鼓動が速くなった。視診では見えにくいが,ざらっとした感触が内診指にあり,思わず大根おろし,民俗学で有名なヴァジナ・デンティータ(歯の生えた腟)を連想した。
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