交見室
パートナーのクラミジア陽性
内木場 拓史
1
1池田病院泌尿器科
pp.267
発行日 2007年3月20日
Published Date 2007/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101047
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「家内がクラミジア陽性だと診断されたんですけど……」。診断した婦人科医に促されて,泌尿器科を受診する深刻そうな面持ちの男性。日常的にみるこのようなケースに悩まされているのは,私だけではあるまい。ほとんどが待望のわが子を授かった妊婦検診で明かされたこと,果たして夫の精査結果は陰性,しかも夫婦ともに性行為感染の「心当たりはない」とくる。複雑な心境にいる夫に,いかに対処すべきか。妻の不顕性感染,夫が感染させたあとに治癒した,などの可能性があるにはある。だが,「心当たりがない」2人を信用してみても,クラミジアの大半がSTDである旨を「医学的」に厳格に告げるべきか,あるいは「社会的」に柔軟に対処すべきなのか。
教科書には「母体から腟に垂直感染することが稀にある」と記されている。また,「性行為以外の感染経路は不明」とする論文もある。そこで,親しい婦人科医に尋ねてみたところ,「女性は男性と違って常在することもあるって誤魔化しているよ。だって,わざわざ大事なときに,医師が夫婦仲をぎくしゃくさせる必要はないだろう」と返ってきた。以来,私もこのきわめて「社会的」な説明を用いている。医学=科学を厳格に扱うべき立場からは,批判される診療態度なのかもしれない。
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