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患 者 65歳,男性。
主 訴 頻尿,気尿。
家族歴 特記すべきことなし。
既往歴 64歳,結腸憩室炎。
現病歴 1年前より頻尿があり,近医で膀胱炎として治療されていた。再発を繰り返し血尿も認められたため,近医泌尿器科で膀胱鏡を施行されたところ膀胱腫瘍が認められ,当科に紹介となった。なお,1年前より時々排尿時に尿とともに空気が出てくる感じがあったが,近医でも特に問題にされず,本人も気にしていなかった。
現 症 身長164cm,体重56kg。体温35.9℃。筋性防御は認めず。
検査成績 白血球12,900/mm3,CRP 1.78mg/dl,そのほか血算,生化学に異常を認めず。尿沈渣では赤血球10~20/HPF,白血球>100/HPF,尿細胞診は陰性であった。尿培養にてEscherichia coliを認めた。便潜血は陽性であった。
臨床経過 膀胱鏡検査では右側壁に小豆大の有茎性乳頭状腫瘍を認め,膀胱頂部は外部から圧排されており,その中心部に浮腫状の隆起性病変を認めた(図1)。MRIでは膀胱頂部の粘膜は肥厚し,T1強調画像で膀胱周囲とS状結腸周囲の脂肪は断裂していた(図2)。T2強調画像で腫瘤の中心部に高信号領域を認め,膿瘍の存在が疑われた(図3)。MRIで膀胱腫瘍は粘膜に限局する表在性の腫瘍と考えられた。DIPおよび排尿時膀胱造影では異常を認めなかった。注腸造影および大腸ファイバーではS状結腸から下行結腸にかけて多数の憩室を認めた。S状結腸に狭窄を認めたが,瘻孔は確認できなかった。
以上,臨床症状と膀胱鏡およびMRIより膀胱腫瘍を合併した結腸膀胱瘻と診断し,まず経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行した。膀胱頂部の病変は結腸膀胱瘻開口部と考え生検も同時に施行した。病理組織の結果,右側壁腫瘍は移行上皮癌,G2,T1と診断され,頂部の腫瘤は炎症細胞の浸潤を伴う膀胱粘膜上皮の反応性増殖を示した。続いてS状結腸切除術および膀胱部分切除術を施行した。摘除標本ではS状結腸は膀胱と炎症性に癒着し,約5cmにわたり一塊となっており,ゾンデにて膀胱とS状結腸間の瘻孔を確認できた(図4)。病理学的検査では悪性所見を認めず,炎症性の肉芽組織が認められた。
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