特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方
5.腫瘍(外来化学療法)
【膀胱癌】
59.リンパ節転移を認めた膀胱全摘除術後の患者です。QOLを損なわない術後化学療法について教えて下さい。
井上 高光
1
,
羽渕 友則
1
1秋田大学医学部泌尿器科
pp.210-212
発行日 2005年4月5日
Published Date 2005/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413100267
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1 診療の概要
1985年のSternbergらによる報告1)以来,従来のMVAC療法は転移性尿路上皮癌に対する標準的化学療法といえる。評価可能病変が存在する場合の奏効率は39~71%と高い1~3)が,6年生存率は3.7%と低く,生存期間の中央値は12か月前後と短い2)。また,MVAC療法には悪心・嘔吐12~34%,白血球減少が72~82%と副作用の強さなど解決すべき問題も残っている1~3)。
膀胱全摘術後にpT3以上あるいはpN1以上であった症例に対する約3コース以上のアジュバント化学療法は,前向きランダム試験で有意に非再発期間を延長する4~6)が,生存延長に寄与するというランダム試験の報告はない。したがって,現時点でアジュバント化学療法の利益は明確でないが,pT3以上またはpN1以上の症例に対し可能ならば3コースのアジュバント化学療法を行うことは,われわれはある程度妥当であると考えている。しかし,MVAC療法を3コース行うことは副作用や長期入院を考えると,QOLの観点からは非常に悪いといえる。
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