特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方
5.腫瘍(外来化学療法)
【術後排尿障害】
65.根治的前立腺全摘除術後の尿失禁の患者です。対処と処方について教えて下さい。
佐藤 威文
1
,
馬場 志郎
1
1北里大学医学部泌尿器科
pp.233-236
発行日 2005年4月5日
Published Date 2005/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413100273
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1 診療の概要
早期前立腺癌に対する対する前立腺全摘除術は,その確立された長期治療成績から,根治的治療のスタンダードとして広く施行されている。しかしながら,その術後合併症として,男性機能不全や尿失禁などは,程度の差はあるものの,一定の頻度で認められるものであり,術後QOL(quality of life)の観点からも大きな問題となっている。Stanfordらの報告1)では,術後18か月の時点で8.9%の症例に尿失禁を認めたと報告しており,Walshらの報告2)においても,尿失禁は術後18か月の時点で93%の症例でパッドを必要としない状態まで改善したものの,1%の症例については尿失禁に対する外科的治療による対応が必要であったと報告している。また,われわれの検討においても,術後18か月の時点で73%の症例がパッドを必要としない状態まで改善するが,70歳以上の高齢者や,術前内分泌療法の併用,術前PSA 10ng/mリットル以上の症例においては,有意な術後尿失禁との相関を認めている3)。
このように,近年の術式の安定や改善および要因の検討により,深刻な尿失禁を認める症例は稀ではあるものの,実際に尿失禁を有する患者にとっては大きな問題であり,特に術後の男性機能不全より術後の尿失禁のほうがQOL低下に強く関与した検討結果も報告されており4),同症状が長期に及ぶことを考えると,その的確な対処はきわめて重要なものと思われる。
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