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1 診療の概要
浸潤性膀胱癌(浸潤癌)は膀胱全摘術を行っても再発・転移をきたすものが少なくなく,5年生存率は50~60%である1)。浸潤癌における化学療法には,このような膀胱全摘術の予後を改善するための補助療法として行うものと,切除不能な進行癌に対して行うものとがある。いずれの目的においても,標準的な化学療法はMVAC療法またはCMV療法であり,特にMVAC療法は50~70%の奏効率が報告されている(図1)2)。
膀胱全摘術の前後に行う補助化学療法の目的は,術後の長期予後を改善することにある。術後に行われるadjuvant療法のメリットは,病理診断の結果に基づいて施行を決定できることである。Herrら1)は,全摘標本において切除断端陰性で郭清リンパ節数が10個以上のものは予後良好であると報告しているが,adjuvant療法では病理学的予後因子で化学療法の適否を決定できる。エビデンスとしては,CISCA療法を施行する群としない群の比較で,術後3年のdisease free rateが70%および46%との報告3)があるが,症例数が十分ではない。Adjuvant療法の臨床研究では十分な症例数を集めにくいという問題があり,これまでにエビデンスとなるような無作為化比較試験(RCT)は報告されていない。一方,術前に行われるneo-adjuvant療法のメリットは早期に微小転移に対する治療を行うことである。Neo-adjuvant療法に関するRCTとして,20か国のInternational Groupによる大規模な研究4)がある。この報告ではneo-adjuvant療法施行群でCR率が高いことが示されたが,3年生存率では有意差がみられていない。一方,米国でもUnited States IntergroupによるMVAC療法のneo-adjuvant療法に関する研究5)が行われ,5年生存率での有意差は出ていないものの(p=0.06),neo-adjuvant療法群における高いCR率は予後の改善につながるとしている。
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