Derm.2002
専門領域に集中することの落とし穴
嵯峨 賢次
1
1札幌医科大学医学部皮膚科学教室
pp.153
発行日 2002年4月10日
Published Date 2002/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412903956
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われわれ皮膚科医は皮膚科学を専門に学び,皮膚科専門の臨床医や皮膚科学の研究者を目指している.その目標を達成するために,皮膚科学の中にさらに専門領域を持ち,その分野を深く追究することの利点を多くの人達が述べている.皮膚科分野の中のある特定の狭い一部門を集中的に5〜6年以上も取り組めば,その道の専門家として認められるようになるのはそれほど難しいことではないに違いない.その分野の知識や技術は深まり,新しい知見も得られるであろう.臨床分野では専門領域に名声を持つ医師の下には多くの患者が集まる.専門分野の研究者は多くの研究費を獲得し,依頼原稿や講演依頼も多くなることであろう.専門家としての名声はますます高くなり,よいこと尽くめのように思える.
専門領域に集中することはよいことばかりで,落とし穴はないのだろうか.長い間同じ分野の仕事を続けていると大胆な発想が出にくくなり,以前行った研究の延長線上の研究ばかりを行うようになるかもしれない.自分自身をある分野の専門家と意識するあまり,他の分野の事柄には興味を示そうとしなくなるかもしれない.このような状態が長く続くと,いずれは“専門バカ”と呼ばれる見識の狭い人間になってしまう恐れもある.
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