けんさ—私の経験
便潜血反応の落とし穴
早川 康浩
1
1石川県済生会金沢病院消化器内科
pp.99
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402906264
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便潜血反応は,主として大腸ポリープ,大腸癌などを見つけるためのスクリーニング検査として,検診をはじめとして臨床の場で広く用いられている検査法である.以前の化学的検査法に比し,近年の免疫学的検査法は感度,特異度とも向上しており使いやすくなってきた.近年の大腸癌の増加傾向とも相まって,利用頻度は増す一方である.しかしながら,ここに大きな落とし穴がある.偽陽性で引っかかる場合はそれほど問題はないのであるが,偽陰性で見落としてしまう場合が,臨床の場では意外と多いのである.特に直腸癌の場合は,便の片側のみに血液が付着することがあり,これが偽陰性の原因になりうるのである.そのほか潰瘍病変を伴わない癌やポリープも偽陰性となる可能性がある.過去に当院でも,進行癌があるのに偽陰性になった例が少なからずあった.患者サイドで考えれば,陰性になった場合,まず自分は大腸には問題ないと判断してしまい,仮に便秘や血便の既往がある場合でも自ら精査を希望する人はほとんどいないのが現状である.大腸癌は,よほど進行して管腔内狭窄をきたさない限り痛みは伴わないため,どうしても進行した時点で発見されることが多い.本来切除も容易であり,予後も良いはずの癌ではあるが,発見時すでに肝臓・肺などの遠隔転移や腹膜・膀胱などの周辺臓器に浸潤していることも多く,こうした例では救命率も低くなる.
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