おかしな検査データ
病理検査の落とし穴
高柳 尹立
1
1富山市民病院研究検査科
pp.840-841
発行日 1978年10月1日
Published Date 1978/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201720
- 有料閲覧
- 文献概要
今回はこの欄で余り取り上げられていない病理検査分野におけるいくつかのトラブルを拾って反省してみたい.
図1は腟分泌物のパパニコロウ染色標本であるが,悪性と判定できる異型細胞の集団が現れている.その形態から腺癌が示唆されたものの,全視野を探しても1箇所のみで,きれいな背景に検体とやや不相応な異型細胞が現れ,細胞構造が不明瞭なくらいにヘマトキシリンに濃染し,しかもわずかながら周りの細胞と焦点にずれを認めることから疑問が持たれる.そこで同日染色の全標本を通覧すると同様の濃染細胞集塊が何枚かの標本に散見され,標本作製過程における混入と判断された.ヘマトキシリン液中に前日染色の癌性腹水標本の細胞が脱落浮遊し,他標本に付着したものと考えられ,染色液の交換により解決した.このような問題は鏡検者の熟練でチェックできることが多いが,1個1個の細胞単位で診断する細胞診においては極力防止すべきで,技師はいつも染色液を十分管理していなければならない.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.