Derm.2000
どうやって傷は治るのか—蒼ざめたマウスをみつめて
高橋 健造
1
1京都大学大学院医学研究科皮膚病態学
pp.178
発行日 2000年4月15日
Published Date 2000/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412903238
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ヒト遺伝子ゲノムの概要が,当初の計画よりもずいぶんと早い今年の春には明らかにされるようです.遺伝性疾患の解明にはますます拍車がかかり,複数の遺伝的素因が関与するであろう乾癬やアトピー性皮膚炎などの発症機序も着々と解き明かされていくと思われます.遺伝情報に関する爆発的な進歩は,大腸菌からヒトのゲノムに至るまでどんな遺伝子を誰が扱っても,共通の割と簡単な方法論が通用するという遺伝子工学の特徴によるところが大きいと思います.しかし個々の疾患の治療法となると,個々の病因に拮抗させる薬剤の開発や導入するための手段は,疾患や臓器ごとに大きく異なるために病因の解明ほどには容易に運びそうにはありません.そこでこれからの臨床医学,特に治療面での期待が大きいのが,臓器の再生に関する再生医学の研究で,京都大学にも再生医科学研究所が新設されました.
そんなわけで表皮組織の再生のメカニズムを探る実験を続けています.皮膚科医ならずとも,創傷や熱傷の後に皮膚が自然に再生して創部を埋めていくのは当然のことのように思われがちですが,実際には表皮や毛嚢のどの角化細胞がどのように潰瘍底に遊走し,実際の再生表皮の基底層や幹細胞を再構成するのか,今のところはっきりした回答はありません.
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