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色素性痒疹に関してはこの特集号の「[臨床皮膚科—最近のトピックス』でも2回ほど取り上げられているが,日本人が記載した数少ない皮膚病の中でも皮膚科医を引きつけるユニークな疾患だからであろう.色素性痒疹の原因は未だ完全に解明されたわけではないが,近年ダイエットとの関連を示す症例が多数報告されており,少なくともダイエットは発症誘因の一つとして疑いはなさそうである.
さて2年ほど前に読んだ月刊の「文藝春秋」に興味ある記事がでていた.その記事は確か“日本におけるダイエット史”といったような題であったことを記憶しているが,その記事によればダイエットの指導が本来なされるべき医師などの手を放れて民間の手に下ってきたのが丁度1970年前後だとのことであった.すなわち今日タレントなどをはじめとする“私のダイエット法”なる類の本が盛んであるが(数年周期で大ヒットする本があるようだ),その記念すべき第1号がその年あたりに出版された弘田美枝子(筆者ぐらい以上の)年代の者は知っている歌手である)による確か“ミエコのダイエット”なる本だそうで,これを契機として続々とその手の本が出版され,世にダイエットブームをわき起こし今日に至っている.周知のように色素性痒疹が初めて報告されたのが奇しくも1971年であり,単なる偶然ではないであろうとこの記事を読みながら驚いた.1970年というと大阪で万国博覧会も開催された年で戦後の高度成長も佳境に入り,世は豊満の時代になりつつあり,ダイエットの需要も増してきたものと想像する.以前,長島先生に昔は色素性痒疹のような症例はなかったのですかと尋ねたことがあるが,昔はあまりなかったようだとおっしゃっていたように覚えている.昔はダイエットなどをする余裕のある時代ではなかったので,本当にこの疾患はあまりみられなかったのかもしれない.疾患も世につれてという例であろう.
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