Derm.'98
正常?異常?
須藤 一
1
1順天堂大学皮膚科
pp.151
発行日 1998年4月15日
Published Date 1998/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412902532
- 有料閲覧
- 文献概要
最近,診察をしていて気づいたことがあります.毎日たくさんの患者さんを診ていて今更こんなことを言うのもどうかと思われるのですが,やっと正常なところと異常なところ(病気?)の違いがわかるようになってきました.腫瘍や感染性疾患ならば,「ここがちょっとあやしい!」などと思うのですが,炎症性疾患では,ひとりひとりの肌の微妙な違いもあり,さまざまな正常がわからなければ,異常すらわからないようなのです.あるエピソードです.中年のご婦人が外来にやってきて,「先生,顔が赤くなってしまったのですが…….」「どこですか?」「ここです,いつもより赤いんです.」と言われます.そこをよくみても全く正常に見え,(私はあなたの知り合いでもないし,いつもより赤いっていわれてもなあ……と思いながら)「それじゃあ,薬を出しておきますね.」などというやりとりをし,その1週間後,再び彼女がやってきて,「先生,すごくよくなりました.」「あー……,そうですか…….」(よくよくみても,全く変わっていないように見えるんだけどなあ?)というようなことがありました.しかし最近になって,患者さんの言っていることは確かに正しくて,正常なところは正常だし,異常なところはやはり異常なのだとやっとわかってきました.皮膚の診療は見た目の勝負です.どこが正常なところでどこがどう異常なところかわからなければ,治療も始まりません.しかし,皮膚科医の眼で異常なところを鋭敏に判別できれば,それがどんな原因でそうなったのかを判断できますし,治療をする上でも非常に役に立ちます.これからもなおいっそう“皮膚科医の眼”を研ぎ澄まして診療に研究に励みたいと思います.
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.