Derm.2023
闘魂に魅せられて
清原 英司
1
1大阪大学大学院医学系研究科皮膚科学教室
pp.160
発行日 2023年4月10日
Published Date 2023/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412206993
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猪木が死んだ.男はよく,年齢を重ねても少年の心を持っているといわれているが,そうであるならば2022年10月1日に筆者の少年時代は終了したということだ.金曜夜8時にごはんを食べながら延髄切りで興奮し,バンバンビガロとの試合で悲鳴をあげ,将来の夢はプロレスラーと文集に書いたことを思い出した.夢は変わるものだ.晩年の猪木の映像を見ていると,ベッドが壊れないかと心配になった.皮膚科医としては褥瘡も気になってくる.体が大きいので,動けなくなったら仙骨部の洗浄とデブリードマンごとにこちらが汗まみれになるのを想像した.最近は特定看護師の制度が進み,技量のある看護師さんならある程度の処置を任せられるので,非常に助かっている.現場の皮膚科医数がシーリングで制限されているエリアでは特定看護師は重宝されるはずであり,看護教育の時点で興味を持ってもらうのも重要だろう.映像では繰り返し猪木の背中が映っていたが,フォールを繰り返し跳ね返した強い背中ではない.引退試合でバックドロップをくらって九の字に曲がったときは,本気で死んだと思った.その後も格闘技界を席巻し,常に安定を良しとしない攻めの姿勢は観ている側も混乱に陥ることもあったが,常に楽しめた.永遠の命は存在しないが,伝説として猪木は残った.さて,自分は皮膚科に何を残せるのか,行けばわかるんだよね,きっと.合掌.
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