FOCUS
真菌に魅せられて
槇村 浩一
1
1帝京大学大学院医学研究科医真菌学宇宙環境医学
pp.562-568
発行日 2021年5月1日
Published Date 2021/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543208380
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はじめに
わが国の日常臨床で遭遇する微生物のなかで,真菌はとりわけ多様であり,またおのおのユニークな美しい形態(通常“顔”と表現する)を楽しめる病原体である.そのうえ,真菌は病原体としても,有用,または環境微生物としてもわれわれに最も身近な存在に違いない.
けれども不思議なことに,真菌(カビ,酵母,およびキノコ)については,初等中等教育のみならず,専門的にも十分な教育がなされることもなく,わかったようでありながらほぼ理解されていない生物群であるのも事実である.わが国のみならず国際的にも,多くの病原微生物学の教科書をひもとくと,真菌の記載のみが微生物学的な分類学に基づいたものではなく,“深在性真菌症原因菌”,“表在性真菌症原因菌”,および“深部表在性真菌症原因菌”などといった,疾病からの視点に基づいていることにお気づきだろうか? なぜか医真菌学だけが,微生物学ではなく感染症学・皮膚科学の視点で議論されている.
この状況は基礎医真菌学研究者としては甚だ残念なことであるので,遅まきながら本稿では,手始めに,いままでスポットライトが当てられてこなかった微生物としての“真菌”を博物的に楽しみ,親しみ,理解するための方法をいくつか提示したい.
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