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過去において女性医師に対し結婚,出産を契機に退職を勧める医局がありました.現在では産休,育休は当然の権利であることが広く認知され,働く女性の支援体制もゆっくりではありますが整備されてきました.育児休暇中の研究助手支援が受けられたり,育児休暇後の復職時には時短勤務が可能な職場も多くなったと思います.その反面,このような支援を受ける女性と受けない女性の間の格差感,不公平感なども広がってきているように思います.厚生労働省は医師の働き方改革のために行った労働時間調査の結果を公表しています.全年齢医師平均の勤務時間1に対して,各年代の男女別勤務時間は20代で男性1.24,女性1.15,30代で男性1.21,女性0.95,40代で男性1.14,女性0.84などとなっています.医療現場で活躍中の40代の女性医師にとって女性は0.84しか働いていないとされるのは大変心外であることと思います.みんなが0.84しか働いていないということではなく,1.0以上働いている過半数の医師がいる一方で,少なからず0〜0.5の医師がいるというのが正しい現状認識です.子育てが一段落した50代でもまだ0.87と職場復帰が鈍いのが現状です.マンパワーとしての女性の評価の低さが,入学試験での差別を生み,昇進人事の足かせになっていることは否定できません.ライフイベントによる休職は当然ですが,可能な限り早く,さまざまな支援制度を利用して完全職場復帰を果たしていただきたいというのはすべての常勤医の願いです.特に皮膚科は外来のニーズが高い診療科であり,非常勤のパート医師でまかなわれている病院も数多くあり,麻酔科と似た状況が存在します.需要と供給による,いわゆる「神の見えざる手」による非常勤医数の調節は医療全体が医師不足である限り機能しません.過重労働を強いられている医師を救うのは喫緊の課題ですが,そのためには女性医師の職場復帰は即効性のある処方箋です.良い仕組みができないものか日々頭を悩ませています.
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