マイオピニオン
新たなキャリアパスとしてのPMDA—研究の先にあるもの
工藤 英郎
1
Hideo KUDO
1
1熊本大学医学部附属病院総合臨床研究部研究シーズ探索センター
pp.198-199
発行日 2018年3月1日
Published Date 2018/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412205329
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臨床の傍ら,基礎研究や臨床研究に日夜取り組んでいる医師にとってのモチベーションは何だろうか? 難病の病態を解明したい,希少疾病の治療薬を開発したい,など,十人十色だと思うが,今のアカデミアのシステム下で研究を継続していくためには,コンスタントに成果を出し続けなければならず,目的と手段が入れ替わってしまうことが往々にして起こりうるのではないか.小生が大学院生として研究に取り組んでいる時期は,STAP細胞,ディオバン事件などの研究不正事案が社会問題化し,日本の研究に対する信頼は地に堕ちた.小生はまだ見習いではあったが,一日の大半を細胞やマウスと格闘し,思うような結果の出ない毎日にもどかしさを感じていた.当時,学会発表を聴くたび,文献を読むたび,結びには決まって“この研究の成果は新規治療に結びつくかもしれない”という文言が使われていたが,全く現実味のない話だと穿った見方をしていた.しかし,実際に研究成果が実用化に至る過程はどのようになっているのだろうか,今後も研究を続けていくために知りたいとも思った.
医薬品の開発は非常に長い年月と莫大な資金を要する.しかも,新薬の候補化合物のうち,開発が成功し実際に上市される確率は,1/25,000〜30,000といわれている.特に,基礎研究から臨床開発への橋渡しの段階は,“死の谷”と呼ばれ,アカデミアと製薬企業の相互理解が得られず,産学連携が円滑に進まない現状から実用化を目指すうえでの大きな障壁となっている.そして,臨床開発におけるもう一人の重要な登場人物が「官」である.
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