Derm.2016
悪性黒色腫の治療—新たな時代の幕開け
藤村 卓
1
1東北大学医学系研究科皮膚科学分野
pp.15
発行日 2016年4月10日
Published Date 2016/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412204723
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2000年より悪性黒色腫に対する免疫療法の確立を目指し,基礎と臨床の間を往復し続けてきたが,2014年についにその夢の一角が現れた.もう皆様ご承知の抗PD-1抗体をはじめとする免疫チェックポイント阻害薬および分子標的薬である.それまで長い年月,IFN-βを中心としたさまざまな補助療法を組み合わせた免疫療法で何とか腫瘍内への免疫細胞を呼び込む手法を検証してきたが,免疫チェックポイント阻害薬の出現のおかげで,思わぬ形でこれら基礎研究が臨床の役に立ちそうである.本当に不思議な巡りあいである.
これまでに私が関わってきた基礎研究は,腫瘍特異的Th1を効率よく誘導する方法の開発から始まり,黒色腫腫瘍内浸潤リンパ球を賦活する方法の開発,IFN-β強化療法の開発など,腫瘍を特異的に殺傷する免疫細胞の誘導法および腫瘍内へのエフェクター細胞を効率よく導入する方法の開発であった.そして2007年に留学先で抑制型免疫担当細胞である腫瘍随伴性マクロファージとPD-L1に出会うことができ,改めて黒色腫治療における免疫の重要性を再認識した.考えてみれば,悪性腫瘍は常に環境に応じて耐性を獲得し進化し続けるが,ヒトのT細胞受容体のvariationは,それを上回るものである.あとは,この免疫細胞をどれだけ腫瘍に効率よく作用させるかが,今も昔も最大の命題であった.その答えの1つが,免疫チェックポイントなのかもしれない.
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