臨床講座=癌化学療法
悪性黒色腫の治療
江崎 幸治
1,2
,
小川 一誠
1,2
Kohji EZAKI
1,2
,
Makoto OGAWA
1,2
1癌研究会付属病院
2化学療法科癌化学療法センター
pp.1782-1785
発行日 1980年11月10日
Published Date 1980/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216768
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はじめに
悪性黒色腫は皮膚に発生する腫瘍のなかでは,最も全身的転移をおこしやすく,進行も早いので,化学療法の対象となる腫瘍である,また比較的若い年齢層に発症すること,時に腫瘍の自然退縮が観察されるように,その発症,経過に免疫学的要素が関与していると思われることなどから,発生頻度は少ないながら,欧米でも本疾患に関しての報告が多い.しかし,わが国ではさらに頻度が少ないため,本疾患の治療に関する系統的報告は乏しい.
悪性黒色腫の5年生存率は欧米の種々の報告によると,24〜42%といわれる.治療の第一選択の方法は,まず皮膚腫瘤の外科的摘出で,それが病理学的に悪性黒色腫と判明すれば,筋膜を含む原発巣の広範囲摘出である,所属リンパ節の郭清に関しては意見の一致をみていないが,所属リンパ節への転移の有無は患者の予後に大きく影響する.つまり所属リンパ節転移陰性の患者の5年生存率は約60%であるが,顕微鏡的に転移陽性の場合は30%となり,さらに臨床的にリンパ節腫大のある場合には10%以下となる.このように悪性黒色腫の治癒を目指すには,病初期の外科的切除が第一であるが,転移が早く,その予測も不可能な場合もあり,化学療法の効果に期待が寄せられる.さらに近年は免疫療法も種々試みられている.本稿では,悪性黒色腫治療の現況を概説したい.
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