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文献紹介 養子免疫療法において体外で腫瘍微小環境を操作することが腫瘍浸潤リンパ球を拡大させる
平井 郁子
1
1慶應義塾大学
pp.228
発行日 2016年3月1日
Published Date 2016/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412204685
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進行期悪性黒色腫に対する腫瘍浸潤リンパ球(tumor infiltrating lymphocytes:TIL)を用いた養子免疫療法は,米国などで行われており,40〜50%の奏効率が報告されている.切除した腫瘍組織とともにTILを培養し,1,000倍以上に増殖させたTILを患者に輸注する.培養早期に腫瘍反応性CD8+T細胞にIL-2を付加する従来の手法は,抗腫瘍効果を持つT細胞の浸潤を促すために不可欠である一方で,浸潤後に高い抗腫瘍効果を維持するCD8+T細胞を増殖させることが,TIL療法の課題とされてきた.
TNF受容体スーパーファミリーに属する共刺激分子である4-1BBの発現は,CD8+T細胞やNK細胞に顕著で,IFN-γ産生を増加させて抗腫瘍免疫応答を増強させる.著者らは以前の研究で,TIL培養の後期に完全ヒト4-1BBアゴニスト抗体(BMS-663513)を投与すると,拡大したCD8+T細胞の活性化起因性細胞死が抑制され,細胞生存が延長することを示した.さらに腫瘍断片から早期に4-1BB発現CD8+T細胞を検出できたことより,培養早期に4-1BBの共刺激を与えれば,さらなるTILの増殖が期待できると考えた.
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