- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
あけましておめでとうございます.オリンピックイヤーを迎え,その次はいよいよ東京だ,と五輪開催が現実味を帯びてくる年になると思います.1月号のあとがきを書くにあたり,2015年のニュースを振り返ってみたところ,偽装に関わる事件が非常に多かったことに気づきました.五輪ロゴの盗作疑惑,ドイツ自動車会社の排ガス規制すり抜け不正ソフト,大手建築業者の杭打ちデータ改ざんなど,個人の「出来心」ではない,組織として行われる大規模な偽装がまかり通っていた事実に驚愕しました.さて,医学論文においてもSTAP細胞や降圧剤臨床研究におけるデータ捏造・改ざんは記憶に新しく,誰かがどこかで止められなかったのか,いまだに残念でなりません.止めることができる可能性が最も高いのは論文の共著者です.論文に深く関与し,結論に対する責任を共有しているからこそ,共著の名誉が与えられるのです.これは『Nature』のような格調高い雑誌に限ったことではありません.たとえimpact factorがつかない日本語の雑誌であったとしても,論文化して公表することは内容に関して社会に責任を持つことになります.すなわち共著者となったからには論文内容に責任を持たなければなりません.逆に,論文に関与していない人を共著者として勝手に名前を入れてはなりません.多数の査読をしていると高名な先生が共著者になっているにもかかわらず,問題がある論文に遭遇することが,稀ながらもあります.本当にあの先生は論文の内容を知っているのだろうか,さらにはご自分が共著者になっていることを知っているのだろうかと心配してしまいます.『臨床皮膚科』では投稿時に共著者全員の掲載同意署名を求めてはおりませんが,くれぐれも当人の許可なく共著者に加えることがないようにお願いします.たとえ良かれと思っても,あとで大きな迷惑をかけることになりかねません.
本年も多数の投稿をお待ちしております.
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.