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文献紹介 脊髄後角におけるSTAT3依存性のアストロサイトの活性化が慢性的なかゆみに関与する
小幡 祥子
1
1慶應義塾大学
pp.42
発行日 2016年1月1日
Published Date 2016/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412204638
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慢性的なかゆみはアトピー性皮膚炎や接触皮膚炎におけるやっかいな症状の1つである.近年,かゆみに特異的な神経伝達経路の存在が明らかになってきたが,かゆみの慢性化の病態メカニズムはよくわかっていない.著者らは,アトピー性皮膚炎および接触皮膚炎モデルマウスを用い,かゆみのある皮膚病変を支配領域とする脊髄後角でのアストロサイトの長期活性化を示し,この活性化はシグナル伝達兼転写活性化因子の1つであるtranscription 3(STAT3)に依存していることを明らかにした.そして,アストロサイトにおいてSTAT3を条件付きで破壊させると慢性的なかゆみが抑制され,薬剤によるSTAT3の阻害によって,慢性化したかゆみが改善した.アトピー性皮膚炎モデルマウスの髄腔内にかゆみを誘導する物質であるガストリン放出ペプチド(gastrin-releasing peptide:GRP)を投与すると掻破行動が増強したが,これはSTAT3によるアストロサイトの活性化を抑制することにより,正常化した.さらに著者らは,アストロサイトにおいてSTAT3依存性に発現が上昇するリポカリン2(lipocalin-2:LCN2)が慢性的なかゆみに大きく関わることを突き止めた.そして,LCN2を正常なマウスの髄腔内に投与したところ,GRP誘発性の掻破行動の増強がみられた.以上よりSTAT3に依存して活性化するアストロサイトが,LCN2の作用増強を介してかゆみの増幅に重要な役割を演じることが示され,慢性的なかゆみに対する新たな治療のターゲットとなる可能性が示唆された.
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