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細胞死の機序としてはapotosisとnecrosisが知られているが,近年,新たな概念として,形態学的にはnecrosisを示すが制御されたシグナル回路によって生じる細胞死であるnecroptosisが注目されるようになった.本論文はStevens-Johnson症候群(Stevens-Johnson syndrome:SJS)/中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)のケラチノサイトにみられる細胞死にnecroptosisが関与していると考え,その機序を明らかにし,SJS/TENにおけるケラチノサイトの細胞死のメディエーターを探求しようとしている.方法としてはSJS/TENに罹患し,治癒した患者から末梢血単核球細胞を分離して原因薬剤を投与し,反応後のsupernatantを用いてさまざまな実験を組んでいる.その中でもキーとなる実験はSJS/TENのsupernatant中に含まれる蛋白質をマススペクトメーターで解析したものである.その実験ではannexin A1という蛋白質がsupernatant中に大量に発現していることが示され,さらにannexin A1を中和させるとSJS/TENにおけるケラチノサイトの細胞死が抑制されることがわかった.また,annexin A1のミメチックペプチドであるAc2-26を投与するとSJS/TENにおけるケラチノサイトの細胞死が誘導された.このことからsupernatant中のannexin A1がSJS/TENのケラチノサイトの細胞死誘導に重要であることが示唆された.
また,annexin A1はFPR1と結合することで活性化することが知られている.本論文では,supernatantに曝露したケラチノサイトには大量のFPR1が発現しており,またSJS/TENの病変部にはFPR1とannexin A1が有意に発現していることが示されている.この結果からnecroptosisが生じる回路にannexin A1とFPR1が存在することが示唆された.
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