- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
この研究では,アトピー性皮膚炎やT細胞性リンパ腫などの皮膚疾患において,炎症やかゆみに関与するIL-31の作用および分子機序について検討された.アトピー性皮膚炎患者の病変部皮膚では,IL-31のmRNAのレベルは健常部の4倍で,その主要な産生源はTh2細胞であった.またヒト後根神経節において,細いニューロンの50.6%がIL-31受容体(IL-31RA)を発現する一方,太いニューロンには発現がみられなかった.
ブドウ球菌エンテロトキシンBを塗布したマウスはアトピー性皮膚炎様の表現型を示し,IL-31のmRNAレベルの増加を認めた.マウスにIL-31の局注および髄腔内注射を行うと,濃度依存性に掻破回数が増えることも示された.そこで,マウスのニューロンでのIL-31RAの局在を検討すると,カプサイシンや熱などの刺激に応答するチャンネル分子であるTRPV1の発現と一致していた.実際,IL-31によって引き起こされるかゆみは,TRPV1欠損マウスおよびカプサイシン髄腔内注射によるTRPV1の焼灼で有意に低下した.またTRPV1と同様に掻破行動との関連が知られる,冷刺激やマスタードオイルなどで活性化されるチャンネル分子TRPA1の欠損マウスでも,野生型よりIL-31局注による掻破回数が減少した.その一方で,肥満細胞を有さないc-kit欠損マウスとPAR-2欠損マウスでは,IL-31によって引き起こされるかゆみの有意な減少はなかった.後根神経節ニューロンには,IL-31とヒスタミンのどちらかに反応するもの,両者に反応するもの,反応しないものと多様性があり,肥満細胞を介したかゆみに関与するヒスタミンよりも,クロロキン,カプサイシン,マスタードオイルのほうがIL-31に反応するニューロンを刺激することが示された.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.