皮膚瘙痒症，特に老人性瘙痒症

PRURITUS CUTANEUS, ESPECIALLY P. SENILIS

　皮膚瘙痒症とは皮膚に固有の原発疹無しにただ痒みだけが有つて，盛んに掻かせる病的状態をいう。掻くために掻痕，色素沈着，軽度の苔癬化，湿疹化，膿皮症等の続発性皮疹を後発することは稀でないが，これらは一次的に生ずるものではない。

　本症は汎発性にも局所性にも，内因によつても外因によつても，またどの季節にも発生するが，老人性瘙痒症と呼ばれるものは老人に生ずる汎発型で，冬季に比較的好発い，内因性のものが大部分であるとされている。しかし皮膚瘙痒症は老人特有の疾患ではなく，また老年層には他の年齢層に比し，これが頻発するや否や，また原因的に特別のことがどの程度に考慮されてよいかなどの問題は再検討されてよい。ここに与えられた課題は瘙痒症，特に老人性瘙痒症についてであるから，先ずこれらのことの検討から始めて，一般瘙痒症の原因，発生機序，治療の面に触れてみたい。各種の瘙痒性皮膚疾患の「痒み」の発生機序については吾人に多大の問題が提供されるが，皮膚瘙痒症に於ても同様である。