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図96劣性真皮型表皮水疱症光顕的にhazyにみえる分離した真皮乳頭層を拡大すると水疱形成の初期の変化がみられる.即ち表皮基底細胞(B),lamina lucida(矢尻),基底板(B)には変化がない.膠原線維の分解による間質の浮腫が著明であり(*),この部位には細い線維が多数あるにもかかわらず,典型的なanchoring fibril(矢印)はかなり減少している.優性型でanchoring fibrilの先天的欠損,形成不全があるとする者1,2)と二次的な変化であると考える者がある3).劣性型でも一次的欠損説3)と二次的変化説4)がある,Collagenaseが増加し,膠原線維やその他の線維成分を融解すると考える者がある5,6)一方,それに反対の意見の研究者もいる7).私の経験ではanchoring fibrilが病巣部に皆無という例は,むしろ稀である,新生児の場合には全く新しい水疱を採取できるので,瘢痕形成と水疱形成を繰り返した成人の病巣と異なる初発の変化をみることができる.本図はその例で,新生児の背部の水疱より採ったものである,最も顕著な変化はやはり膠原線維の消失であろう.この部位には,正常では多数の大小の膠原線維が交錯しているはずであるが,この図では2,3本(C)の残存をみるのみで,他は無構造なモヤモヤした物質に変化している.更に変化の進んだ部位では空隙の形成がみられる(*).所々に基底板の増殖が起こり(BL),それにanchoring fibrilが付着している.更に弾力線維の構成成分であるmicrofibrilあるいはelastofibrilと呼ばれる線維の束が基底板より伸びている(E).これらはoxytalan fiberといわれる弾力線維の最も細いものに相当する.以上の所見より劣性遺伝型の真皮型では膠原線維の破壊が最も顕著で,anchoring fibrilもかなり影響を受けることがわかる.一方,弾力線維の線維成分であるmicrofibrilにはあまり変化がなく,基底板,表皮基底細胞には一次的な変化はないといえる.
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