連載 皮膚病理の電顕・38
表皮水疱症(Ⅱ)
橋本 健
1
Ken HASHIMOTO
1
1Department of Dermatology, Wayne State University School of Medicine
pp.900-904
発行日 1984年9月1日
Published Date 1984/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412203124
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図86電顕的には表皮基底層に空胞が生じている.最初の変化は普通,基底細胞の浮腫(*)とトノフィラメントの凝縮ないしは断裂である(図87参照).凝縮したトノフィラメントは恰もケラトピアリン顆粒のようにみえる(矢尻).線維成分が大部分消失するか凝縮しているため,細胞は明調で,核(n)のみが目立つ.図85B,Cで基底層が抜けたように見えたのは,このためである.細胞に対する障害が基底細胞に主として起こるのは,恐らくこれらの幼若な細胞の細い線維成分のためであろう.例えば,トノフィラメントが特異的に消化される場合,基底細胞には50,56KDクラスの分子量の比較的小さい線維しか存在せず,表皮上層に行くにつれて大きな分子量を持った(58,65-67KD)太い線維が形成されてくる1,2).障害がトノフィラメント或は分子量の小さいケラチンに特異的であろうという推測は,病巣に同時に存在するメラノサイト(M),顆粒(1)を含むランゲルハンス細胞(L)が全く障害を受けていない事実,表皮中層の既に分化の進んだ細胞(P)のトノフィラメントは多少の凝集を示すが細胞自身は全く健常である事実,基底細胞でもトノフィラメントが完全に消失しているのに核は正常にみえることなどから,一次的変化は幼若なトノフィラメントに起こっていることが想像される.この拡大でも基底板(B)とその附近の膠原線維に異常のないことが窺える.
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