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図95真皮型表皮水疱症"Epidermolysis"のいろいろな型の中には,simplex型のように確かに表皮の解離を起こすものもあるにはあるが(図85-88),図89-92に亘って観察したletalis型のようにlamina lucidaで解離の起こるものや,これから解説するdystrophic型のように真皮上層で分離の起こるものもあるので,この名称は適当でない.Dystrophy (異栄養症または栄養障害症)なる概念はAschoffが,細胞あるいは組織の形態学的変化を起こす原因が,それらの物質代謝障害に基づくと考えられた時代に使用した.なるほど筋ジストロフィーなどの場合には,筋細胞の萎縮の起こる病型もあるので,この名称は現在でも(特に原因不明の場合)都合良く使われている.Dystro-phic typeでは電顕的に基底板直下の真皮乳頭層の解離が先ず起こるのでdermolytic typeとも呼ばれているが,epidermolysisにdermolyticでは話が混乱する.このように学問の進歩と共に病名がおかしくなる例は沢山あり,本症もその1例である.Epidermolysisなる病名は文献に浸透しているし,人口に膾炙しているので一応残すとして,epidermal type, junctional type,dermal typeに分類するのがよかろう.
さて,dermal typeの中で劣性遺伝をする型で,全身性に水疱形成のみられるもの(図95A)が一番重症である,爪(図95B),歯(図95C),頭髪(図95D)が凡て脱落し,深い難治な潰瘍を作る(図95E).一般に劣性遺伝をする病気は優性遺伝をするものより重症であるが,本症も例外ではない.水疱形成と糜爛が繰り返し起こっているうちに棘細胞癌が発生することもある.優性遺伝を示すdermal typeには主に四肢に限局している型(Cockayne-Touraine型)があり(図95F,G),爪,歯,頭髪の異常は極く軽度か欠如する.他の優性遺伝を示すdermal typeには躯幹,上腕などに多数の白い丘疹または小局面を作ってくるalbopa-puloid型(Pasini型)があり(図95H),この型は時として劣性型に近い重症な皮膚症状を示す.多数の丘疹はalcian blueに染まる酸性ムコ多糖類からなる(図951)(図95IはPAS-alcian blue染色).
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