連載 皮膚病理の電顕・9
皮膚結合織の病変(Ⅸ)—光線性弾力線維症(3)皮膚粘膜ヒアリノーシス(1)(2)
橋本 健
1
Ken Hashimoto
1
1Wright State University School of Medicine
pp.852-856
発行日 1979年9月1日
Published Date 1979/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412202121
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光線性弾力線維症(3)
図22 変性した弾力線維様物質は最後にどうなるのであろうか? 本図と挿入図で示す如く電子密な部分が減少し,全体として中等度電子密な物質が主要な部分を占めるようになる.本図では中等度電子密な部分が依然として線維としての輪廓(*)を保持している.しかしその周囲から極く細い細線維がほつれ出している.これらの細線維は正常皮膚で弾力線維の出来始めにみられる微小細線維(microfibril)1)に類似するものもあるが(F),大部分は極めて細い(f),多くの極細線維はむしろコロイド物質中に少量混在する線維成分に類似する(図17,18参照).膠原線維が図の左側にみえているが全く正常で,塩基性変性に寄与している可能性は全く除外できる.したがって電顕像より判断すれば,膠原の好塩基性変性(basop—hilic degeneration of collagen)なる呼称は妥当ではない.図の右端に石灰沈着(C)が見える.電子密度が非常に高いほかに周囲鮮明で中心部にヒビ割れを生じ,hydoxyapatiteが抜けた跡がみえるので弾力線維の電子密部分と区別できる.
一般に弾力線維は幼若なものほど微小細線維の量が多く,成熟するにつれて電子密な部分が増加し,老化すると線維全体として不整形を示し,骨格線維がバラバラになり,石灰沈着が起こるようになる2).これらの変化は病的な弾力線維の崩壊,例えば弾力線維性仮性黄色腫にもみられる所見である3,4).
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