Japanese
English
展望
皮膚疾患と全身
SOME SKIN DISEASES INCIDENTAL TO SYSTEMIC DISTURBANCES
野原 望
1
Nozomi NOHARA
1
1岡山大学医学部皮膚科教室
1Department of Dermatology, Okayama University School of Medicine
pp.1049-1056
発行日 1967年10月1日
Published Date 1967/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412200223
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I.はじめに
近時,皮膚と全身,あるいは皮膚と内臓などのフレィズをしばしば見聞きするようになつた。膚(またはその病変)を全身(またはその病変)との相関において認識しあるいは理解しようとすることは,極めて自然な発想であつて,おそらく歴史的にさかのぼつてみても,その初段階が既にそのような志向をもつて出発しているに違いないと思われる1)2)。しかし,その後の歴史の流れからみると,19世紀中葉以来,HebraやUnnaらにより漸く体系づけられてきた近世皮膚科学は,その後一途に形態学的観察方向へと発展を遂げ,(morphologisme),今日の記載皮膚科学の確立をみるに至つたことは周知の事実である。皮膚病変に対する緻密な形態学的分析やその整理が,皮膚疾患の本質の把握にとつて不可欠の前提であろうことはあまり異論のないところであろうし,むしろそのような思考態度こそ皮膚科学の特性といつた方がよいかも知れない。しかしながら皮膚の肉眼的変化,すなわち皮膚発疹は例えば人種,性,年令,職業,季節,身体部位などの別によつてもしばしば微細な差異を生じうるものであつて,その蔭には皮膚の複雑な組織学的構造はもとより,全身あるいは皮膚の場の生理的生化学的動向もまたその因として関与しうるものであることを看過しえない。
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