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展望
顕症梅毒について
REVIEW ON SYPHILIS RECENTA IN RECENT YEARS
佐野 栄春
1
,
本間 真
1
Shigeharu SANO
1
,
Makoto HONMA
1
1神戸大学医学部皮膚科学教室
1Department of Dermatology, School of Medicine, Kobe University
pp.467-477
発行日 1967年4月1日
Published Date 1967/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412200141
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Ⅰ.まえがき
いうまでもないが,性病とくに梅毒は奥深く人間のサガに根ざすものだけに,その根絶はなかなか容易なことではない。とはいえ,社会状勢,治療法の進歩,予防対策の如何によりその動静に大きな変化がみられる。事実かの第2次大戦後の猖獗期からさほど日を経ぬうちに,社会の安定化,抗生物質の登場と共に新鮮梅毒患者を絶えてみぬようになり,講義材料にもこと欠く有様で,いつしか梅毒が地球上から絶滅したような錯覚に陥つていた。之は我が国のみならず欧米においても同様で,Arch.of Derm. & Syph.からSyphilologyの名が消えたのもその間の模様を如実に物語る。所が昭和36年に到りかかる太平ムードをあざ笑うが如く,突如として近畿瀬戸内地方,北九州に勃発的に顕症梅毒の出現をみ,2〜3年のうちに全国的に蔓延をみて,我々専門域のみならず重大な社会問題として取上げられるに到つたことは耳新しい所である。急遽日本皮膚科学会では昭和40年5月,学会シンポシウムとして「最近の顕症梅毒」が論じられ,機関誌「性病」が復刊され,又近くは性病予防法の改正が行われる等,一般啓蒙と共にその積極的対策が講じられつつある。
今回「顕症梅毒」なるテーマを与えられたが,今次流行の初めに当り警鐘をならした一人として適当な解説をすべき責任も感じているか,既に上記シンポシウムをはじめ各所でこの問題は縦横に論じられているので,新たに附加すべき何物もない。ここでは最近の梅毒の疫学的俯瞰につき簡単にふれ,後は主として顕症梅毒の臨床像につき自験例をもととして略述し,今次流行期の特徴の2〜3について考察することにしたい。
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