Japanese
English
綜説
軟膏療法,とくにコルチコイド軟膏の最近の進歩
RECENT PROGRESS OF CORTICOSTEROID OINTMENT THERAPY
中村 家政
1
Iemasa NAKAMURA
1
1熊本大学医学部皮膚科教室
1Department of Dermatology, School of Medicine, Kumamoto University
pp.457-465
発行日 1967年4月1日
Published Date 1967/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412200140
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Ⅰ.はじめに
corticoid (以下「コ」と略す)製剤に限らず,軟膏療法の優れた特徴は薬剤を直接病巣に作用せしめることが可能で,而も全身性の副作用を少しも考慮する必要のないことであろう。しかし皮膚には凡ゆる外的刺激から護るために角層を中心に一種のbarrierがあり,このために投与された薬剤もここで阻止されて充分な量が真皮に入つて行かず,全身投与に比べるとどうしても適用範囲が狭い,又後述するように薬剤の吸収経路は主として毛嚢,脂腺系で,従つて生理的に毛嚢を欠き,しかも角層が著しく厚く出来ている手掌足底や,これに近い状態にある病的皮膚では従来軟膏療法が殆んど無効とされていた。処が,最近Sulz-berger & Witten1),Scholtz2),Tye3)らが「コ」軟膏を特殊な方法で密封する,いわゆるocclu-sive dressing technique (密封療法,以下O.D.T.と略す)を考案,爾来軟膏の適応範囲は著しく拡大され,上述の如き部位でも結構皮膚内における病巣の修復を期待されるようになつた。しかも都合のよいことはその際吸収される「コ」の吸収量が全身性の副作用を惹起する程大量でないことである。かくてO.D.T療法は軟膏療法に一大進歩を斉らし,これを契機に薬剤の皮膚吸収に関する研究も再び活発に論議され,最近この方面にも数々の知見が報ぜられている。そこで以下O.D.T.療法を中心に軟膏療法の最近の動向を述べ,併せて些か私見を加えてみたい。
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