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I.はじめに
1940年頃までに大きな発展を遂げたビタミン領域は最近新しい分野で再び活発な活動をおこなつている。放射性ビタミンや抗ビタミンを用いての研究がそれである。Kühnau1)は予期しなかつた方向からビタミン領域にfruchtbarer Impulusがくわえられたとのべているが,最近の放射性ビタミンや抗ビタミンを駆使しての研究は生化学的代謝機構の解明,抗生物質,抗癌物質の開発に大きな成果をあげた。皮膚科領域のビタミンにふれるまえに,この問題をはじめにとりあげてみたい。
Somogyi2)は抗ビタミンをビタミン効果を特殊な方法で減少させるか,消失させるものと定義しているが,抗ビタミンがはじめて注目されたのは1940年のWoodsらのsulfonamideのパラアミノ安息香酸に対する抗ビタミン作用からであろう。以後多くの抗ビタミンが開発されいままで容易でなかつたビタミンの欠乏症状が人や動物で容易に観察されるようになつたばかりでなく,治療にも用いられ,このなかにducumarol(K1),aminopterine(葉酸),amprolium(B1),sul-fonamide(PABA),tetracycline, atebrine(B2),INAH(B6,ニコチン酸),サイクロセリン(B6)などがある。INAHを例にとつてみよう。INAHは同時に2つのビタミンに拮抗する特異なものでB6とはpyridoxal phosphateとSchiff塩基をつくりヒドラゾンを形成するゆえに,ニコチン酸とはニコチン酸を構成因子とするNAD+(nicotinamide adenine dinucleotide)のニコチン酸部分を駆逐,isonicotinic acid hydrazide-dinucleotideをつくり結核菌のB6,NADの代謝障害を来す。INAH長期連用によつて人にB6,ニコチン酸欠乏症状が発生し,B6,ニコチン酸投与によつて治療しえる。ヒスタミンの抗NAD+作用も臨床面から興味があり,Kühnau1)はヒスタミンはNAD+のニコチン酸部分にとりこまれるが(第1図),アレルギー,アナフイラキシー時に生体から遊離されるヒスタミンがこの様な機構で不活性化されうる可能性もあると考えている。放射性ビタミンによるビタミン代謝の解明に果した役割も大きくその多くの実例はのちにふれることができると思う。
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