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新しい年度が始まり,新しく皮膚科を目指す医師を迎えて,皆様心機一転,診療,教育,研究に邁進されていると思います.この「あとがき」を書いている3月11日はわれわれの大学の卒業式にあたっており,夕方には謝恩会で祝辞を述べなければなりません.私の一番嫌いなあとがき,祝辞と今日は私にとっては厄日かもしれません(実際に卒業式出席中に東日本大地震があり日本にとって未曾有の危機をもたらす日になってしまいました).
とりあえず,最近の診療で私が感じていることを書いてお茶を濁したいと思います.ご存じのように昨年1月に生物学的製剤が乾癬治療に導入されてから既に全国で2,000名程度の方がこの治療を開始されています.患者会も次々と立ち上がり,東京の会はついにNPO法人になっており,患者さん同士の密な情報の共有だけでなく,ネットを通じてさまざまな情報が得られるためか,われわれの外来にもひっきりなしに乾癬患者さんが新しい治療を求めて受診されています.なかには乾癬と誤って診断され,シクロスポリンを内服していた菌状息肉症の患者,ステロイドの内服に加え,最強のステロイド外用薬とビタミンD3外用薬で皮膚が全体に萎縮した難治性の結節性痒疹,貨幣状湿疹の患者さんなど乾癬以外の方も多数みられます(その半数以上が皮膚科で診療されていたという嘆かわしい事実があるのが大変,残念です).本当の乾癬患者さんでも,その重症度は必ずしも重症な方だけでなく軽症の方もたくさんおられます.皮膚科だけではなく,内科,外科の医師から紹介状を貰って受診される方がほとんどで,その理由を聞くと乾癬を専門としている施設できちんと病気と治療法の説明をしてほしいとのことです(話を聞くとほとんどの方が丁寧な説明を受けておらず,これも問題と感じました).この傾向は今までにはあまりなかったことで,生物学的製剤の導入によって患者さんの意識にも新しい変革がもたらされ,積極的に治療に取り組む意欲が高まってきているようでわれわれ皮膚科医にとっては順風状態になってきているといえるかと思います.4月からは抗Il12/23P40抗体も使用が開始可能になる(ちなみに1本の薬価は426,552円)ので,ますます,この傾向が続くことを期待しています.とはいえ,初診で乾癬の患者さんが続くと何度も同じことを説明するのは疲れてくることも確かです.昨日,深酒しすぎたことを反省し,罪滅ぼしに,患者さんには1~2時間も待たせたことをお詫びするとともにせめて罪滅ぼしに,今日病院に来て本当に良かったと思ってもらえるような診療を行えるよう一日一善の志を持って,日々努力しているつもりです.東日本大地震で亡くなられた方々の御冥福を祈りつつ筆を置かせていただきます.
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