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医学の進歩は日進月歩というが,皮膚病治療においてもつくづく実感させられている.代表的な皮膚病である乾癬の治療の進歩には目をみはるものがある.今から約35年前が一昔前になるかどうかわからないが,当時の乾癬の治療はステロイド外用とゲッケルマン療法であった.当時私がいた大学では,ゲッケルマン療法の時は2人同時に入院させて,お互いにコールタールを塗り(特に背中),病院の屋上で日光浴,そしてコールタールを塗る綿棒は自分たちで作って暇を慰めるというのが標準,つまりお決まりの治療であった.その後,ビタミンD3外用薬,レチノイドおよびシクロスポリン内服,PUVAやナローバンドUVBなどの光線療法の進化,そして抗TNF-α抗体療法である.特に,抗TNF-α抗体療法は現在治験が進行しているが,その効果は素晴らしいの一言に尽きる.Sさんという30年来の乾癬患者さんであるが,手背や前腕など人目につくところに発疹があるため,さまざまな治療をしていたが今一つであった.抗TNF-α抗体療法の治験に参加したわけであるが,プラセボにあたってしまい,徐々に悪化し,ついには紅皮症状態になってしまった.あまりにひどいので,我々は治験脱落を勧めたのであるが,本人は何とか終了まで頑張り通した.その後,実薬投与したところ,1回の注射でPASIがほぼ0になり,30年ぶりに半袖のシャツを買ってきたとのこと,Sさんともども喜んだわけである.この間,基礎および臨床免疫学が進歩し,乾癬病態が大いに解明されてきたことが,この治療法につながったことは間違いない.今後,乾癬を含め多くの皮膚病でさまざまな画期的治療法が生まれることを予見させることではないだろうか.
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