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皮膚科は妊娠科?(Is Dermatology a subspecialty for infertility?)
「マユミ,そのドアをあけてはいけない!」同僚のE氏が大声で叫ぶ.一体,何事かと思うと,「ドアの向こうには妊娠ウイルスが蔓延しているから,共同研究者のマユミまでかかってもらっては困る.」という.そう,どうもここコロラド大学皮膚科学教室には妊娠ウイルスがいて,かなり感染性が高いらしい.もちろんこのウイルスは,女性のみならず男性にも感染する.そのうえ,一度かかっても免疫ができないので再感染することも多いようだ.しかも普通の風邪ウイルスと異なって,罹患するのは若い働き盛りの研修医と研究室員に多い.特に研修医の罹患率なんて,仕事の忙しさによる易感染性(?)を反映するのかかなり高い.ここで改めて過去のワシントン大学時代の研修医,現在のコロラド大学の研修医の状況を思い起こしてみると,すでに子どもが2人いる人と未婚の人を除いた20人のうち,なんと16人が研修医時代からその直後にかけて妊娠している.8割というかなり高い確率を考えると,いっそのこと皮膚科の隣で不妊外来を開くとこの強力なウイルスのこと,さぞや繁盛するのではないか,と思ってしまう.
最近はアメリカでも女医さんが増えてきた.アメリカの医学部入学者は女性のほうが男性よりもやや多く,なかでも人気のある皮膚科の入局者は,トップ10%からの激戦であるにもかかわらず男女ほぼ同数である.昨年の卒業研修医は4人全員女性であった.たいていの女性は,医学部在学中は単位と好成績を保ちつつ産休を取るのは難しいのと,将来のめどが立たないのとで,妊娠時期を先延ばしにしていることが多い.卒業しても,1年目の内科インターンの時は3~4日に一度宿直があり,1年に3週間の休暇以外は超多忙である.ところが,皮膚科に入った途端に勤務時間は8時~5時の普通の生活に戻り,当直はなくなり宅直が順番に回ってくるだけとなる.しかも,もう将来の設計図(高給取りの皮膚科医になる)は描かれている.やはり人間はストレスがないと妊娠しやすいようだ.
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