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医療費報酬 (Medical Bill)
さて,診察が終了しすべての書類が提出されると,保険会社は書類審査をした後,問題がなければ医療費を支払う.ところが,この医療費に関するトラブルは後を絶たない.なんといっても高いので,保険会社はなるべく払いたくないのが本音であろう.前回にも書いたように,事前に保険会社の承諾をとっていないと,どんなに正当な治療や処置であっても支払われなかったり,高額な治療は安いものに変えられたり,治療費支払いの上限が決まっていたり,必要性を証明する書類を請求したりして支払いを先延ばしにして手続きを煩雑にする,などいろいろある.ジョン・グリシャムの小説で映画にもなった「レインメーカー」では,マット・デーモン扮する新米弁護士が保険会社を相手に白血病のドニーのために裁判を起こす.ドニーは骨髄移植しか生きる道はないが,彼の入っていた保険会社は承諾してくれないのである.その後,保険会社の元秘書が,すべての請求をまず却下するよう社員教育されていた裏話を裁判にて暴露し,ドニー側は勝訴するが,その判決を聞く前にドニーは死んでしまう.
アメリカの保険医療費は,病院と医師の両方に対して支払われ,病院施設料(ホスピタルフィー)は病院に直接支払われるが,医師医療費(ドクターフィー)は,コロラド大学ではUPI(University Physicians, Inc)という会社に支払われる.UPIは,大学病院とは全く別個の,大学病院医師のための会社であり,皮膚科だけでなく,全科の医師の医療費収入を管理している.このUPIから,コロラド大学へ一定額が入金され,グラント(研究助成金)やその他のお金と合わせた後,大学から毎月私のもとへ一定の給料が支払われるという仕組みになっている.そのUPIから毎月,電子メールで自分の外来の報告書(自分の診察した患者の名前,保険会社の情報,診察内容と請求金額,保険会社からの支払い)が送られてくる.はじめのころは,その診察料と処置料が高額なのにやはり驚いた.紹介患者の顧問診察料はレベル3(たいていの皮膚科診察はレベル1~5のうちの3である)で178ドル,再診料は68ドルか111ドルである.日光角化症に液体窒素を使えば,最初の部位は65ドル,2個目からは1個17ドルで,15個以上を治療すると一律302ドルとなる.しかし,もっと驚いたことには,この金額はドクターフィーで,ホスピタルフィーはなんとこの金額の約3~4倍という.確かに,医師1人に対し,レジデントとスタッフの数は3~4倍もいるし,病院の立派な建物を見ても,お金がかかっているのがわかる.しかし,保険会社は私の請求額(ドクターフィー)の約4~5倍を支払わないといけないなんて,どうりで保険会社が支払いを渋るわけだ,と妙に納得する.
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