Derm.2006
土地土地の皮膚病
米田 耕造
1
1香川大学医学部皮膚科学教室
pp.43
発行日 2006年4月1日
Published Date 2006/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412100622
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この文章を書いているのが,2005年10月17日です.昨年の12月に秋田大学から香川大学医学部皮膚科に赴任しました.毎週月曜日は外勤日です.高速道路を走って,愛媛県と香川県の県境近くまでも行きます.大学への帰途,自分自身に向かってつぶやきました.「今日も出会うことができなかったな」と.「あっそうか.ここは秋田じゃないんだ.」
そうです.秋田では,毎年秋風が吹くようになると,必ずその患者さんに出会っていました.1999年から6年弱秋田にいましたが,初めてその患者さんを見た日のことは,今でも鮮明に覚えています.1999年の秋,少し肌寒くなる頃,私の外来にその患者さんが,腰掛けて,「先生,これなんだすか?」と秋田弁で,尋ねてきました.上半身胸部から腹部にかけて,幅数ミリの線状隆起性紅斑がぐるぐると,まさに“とぐろ”を巻いて蛇行していました.隆起性紅斑の一方の端は鮮やかな紅色で,反対側の端は茶色くなっています.ところが,私の隣でシュライバーとしてコンピューターの入力を手伝ってくれていた地元出身の若い女医さんは,特に驚くわけでもなく,患者さんに「最近シラウオを食べなかった?」と尋ねました.患者さんは,「うん.夏の終わりから,毎晩食べてるだべ」と答えています.女医さんは「シラウオを生で食べるとそんな病気になるのよ」と患者さんに話しています.その一連のやりとりの間,私はまったく無言でした.女医さんと患者さんの話を聞いていて,おぼろげながら理解したことは,「これは,クリーピング・ディジーズらしいけど,秋田ではよくある病気なんだ」ということでした.
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