Derm.2006
医学と統計にまつわる瞬篇4題
幸野 健
1
1関西労災病院皮膚科
pp.35
発行日 2006年4月1日
Published Date 2006/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412100621
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1. 平均値の世界と実相
「患者に薬剤Aを投与したがIFN-X量には変化がなくIL-Y量は有意に低下した」といった論文がある.これを信じて,自分の患者に薬剤Aを投与すると,どの患者でも「IFN-Xは変化がなくIL-Yは下がっている」のだと思ってしまう.
だが,元の研究の生データを眺めてみると,「ある患者ではIFN-Xは不変どころか低下,別の患者では非常に上昇,不変の患者などいない.ある患者ではIL-Yは低下どころか上昇,しかし,確かに非常に低下した患者もいる」というのが実相だったりする.平均値だけで「わかったつもり」になると誤解してしまう.個々の患者でどのような事象が起こっているのかはわからない.われわれにできるのは,「研究結果」という集団の確率的傾向性から類推することだけである.標準偏差や誤差(示されていればだが)から想像力を働かせてデータのバラツキという実相を認識しない限り,われわれは延々と「だまし絵」の世界に住むことになる.
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