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頭頸部癌集学治療と抗癌剤感受性試験—歴史と展望
中島 格
1
1久留米大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.389-399
発行日 1998年6月20日
Published Date 1998/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902729
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はじめに
頭頸部悪性腫瘍の治療では,本来の目的である生存率向上に加えて,治療後に日常生活に復帰するためには構音や嚥下機能などの回復が必要であり,他臓器の治療にはない特殊な問題点を抱えている。このため手術,放射線,化学療法を組み合わせることによる適切な治療の選択が必要であり,事実,多くの頭頸部癌専門医が長年この問題に取り組んできた。
CT, MRIをはじめとする画像診断の進歩による早期発見や腫瘍の進展範囲の正確な把握は,治療計画立案に寄与した。また再建外科の技術の進歩は,従来手術不能としてきた進行癌の根治的手術を可能にし,音声や特に嚥下機能の獲得に多大な進歩をもたらしている。頭頸部癌治療の基本が手術,放射線,化学療法による3者併用療法であることは広く認められてきたが,このうち化学療法については,前2者に比べてその評価や方法は未だに確立されておらず,試行錯誤を繰り返しているのが実情である。すなわち,従来より頭頸部癌の治療は放射線療法,手術療法が主体であり,抗癌剤を用いた化学療法は補助療法として用いられるか,末期癌や手術不能例あるいは再発例に対する姑息的治療として用いられる傾向にあった。こうした概念から,化学療法を少しでも積極的な治療法として発展させるべく,これまでも新たな抗癌剤の開発や,抗癌剤投与方法の工夫および副作用軽減の努力がいろいろ考案されてきた。しかし,現時点ではやはり画一的なregimenではその効果に限度があるのが実情である。
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