トピックス めまい—私の考え方
2.動揺病について
高橋 正紘
1
1東海大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.661-665
発行日 1999年9月20日
Published Date 1999/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902042
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
動揺病は車酔い,船酔いなどの乗物酔いとしてよく知られている。気分不快がまず現れ,顔面蒼白,冷汗,唾液分泌亢進などとともに吐き気が増強し,ついには嘔吐で終わる。学童期にしばしば経験するが,成人後は稀となる。しかし,動揺病の本質は不快症状ではなく,これを誘発させる外界の知覚異常にある。高齢者が増し,動く歩道や移動する閉鎖空間の施設が多くなると,知覚環境が動作に及ぼす影響が注目されるであろう。
動揺病を理解することは,これらの対策を練る上で有効である。当初,予想されなかったことであるが,実験的動揺病の研究1〜10)は,一見複雑な日常動作の背後に巧妙で単純な原理のあることを示してきた。これらについては,総説として報告してきた11〜14)。
本稿では,特に合目的に制御される日常動作との関係で動揺病を解説した。
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.