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動揺病と空間識
高橋 正紘
1
1山口大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.383-395
発行日 1995年5月20日
Published Date 1995/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901130
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I.動揺病をめぐる諸説
動揺病は車酔い,船酔い,あるいは無重力環境で起こる宇宙酔いなどの総称である。顔面蒼白,冷汗,唾液分泌亢進,吐き気,嘔吐,頭痛などから成る。脊椎動物では魚類から高等哺乳類まで,症状の内容は異なるが動揺病の起こることが知られている。良く知られた現象であるが,いまだ発現メカニズムの定説はない1)。
動揺病をめぐる一番の謎は,生体にとって不快な現象(嘔吐)が何故人類にまで受け継がれてきたか,という問題である2)。この事実は,長い間研究者を悩ませてきた。Reasonらは感覚混乱説(Neural conflict theory)を発展させ,感覚配置変え説(Sensory rearrangement theory)を提唱した3)。この説によれば,矛盾する感覚情報は統合を妨げ,中枢の感覚配置変えが達成されるまで,自罰的な不快症状(self-inflicted symptom)が出現する。
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