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難聴の遺伝子解析—update
宇佐美 真一
1
1弘前大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.327-338
発行日 1999年5月20日
Published Date 1999/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901988
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はじめに
ここ数年の分子遺伝学のめざましい発展により,既にいくつかの遺伝性難聴の原因遺伝子,あるいは原因遺伝子の存在する染色体上のおおよその位置(遺伝子座)が特定され始めている。疫学統計によれば小児の難聴の約半数は遺伝性のものと考えられている1)。また,一般的に遺伝性難聴というとごく限られた先天性の難聴家系を思い浮かべがちであるが,後天性の難聴でも加齢,騒音,感染,耳毒性薬物などに対する受傷性には一般的に個人差が多いことから,これら環境因子に遺伝性の因子が加わった難聴というものを含めると,まさにほとんどの難聴には遺伝子が関与していることになる。従来ほとんど原因不明だった遺伝性難聴の原因遺伝子(座)が明らかになり,急に日常臨床にも身近なものになってきた感がある。今後はこれらの分子遺伝学的知見が増すにつれ難聴の正確な診断がなされるようになり,治療やカウンセリングに結びついていくと思われる。
本稿では,現在までに明らかになっている難聴の原因遺伝子をまとめるとともに,われわれの研究室で実際に手がけているいくつかの原因遺伝子のうち耳鼻咽喉科の日常臨床に関係が深いと思われる3つの遺伝子変異に関して紹介する。
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