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上気道粘膜免疫研究の展望—中耳炎予防ワクチンの開発に向けて
黒野 祐一
1
,
鈴木 正志
2
,
茂木 五郎
2
1鹿児島大学医学部耳鼻咽喉科学教室
2大分医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.713-721
発行日 1998年10月20日
Published Date 1998/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901866
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はじめに
中耳炎の発症頻度は今日でもなお高く,急性中耳炎は生後1年目の後半から多くなり,3歳までに過半数の小児が少なくとも一度は罹患するといわれる1)。滲出性中耳炎も4〜6歳の小児に好発する2)。これらの中耳炎,特に急性中耳炎の起炎菌の多くは抗生剤に感受性があり,現在でもその治療に様々な薬剤が用いられている。しかし近年,β-ラクタマーゼ産生インフルエンザ菌に加えて,ペニシリン低感受性,さらにはペニシリン耐性肺炎球菌など多くの耐性菌が検出されるようになり,大きな問題となっている。また,米国ではこうした中耳炎治療に要する年間医療費が20億ドルを超えるといわれ,医療経済の面からもワクチン療法の開発など予防法の確立が急務とされている。
本稿では中耳を含む上気道における細菌抗原に対する免疫応答,中でも最近注目されている粘膜免疫応答に関するこれまでのわれわれの研究成績をまとめ,中耳炎に対する経口ワクチンあるいは経鼻ワクチンなど粘膜ワクチン療法の展望について述べてみたい。
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